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  • 執筆者の写真Shintaro Takahashi

10/5 2018

今週末、兄の結婚式がある。

台風25号の行方が心配だったが、北の方へそのまま抜けるらしく、日曜日には晴れる可能性すらあるらしい。

秋の陽気がもう一度戻ってきて、高く伸びた空の下でふたりの結婚式を祝えることができるかもしれない。


私はというと、京都大学の病院で清掃員をしている。

一般のゴミや感染の危険性のあるゴミをカートに放り込んで、ゴミ集積所まで運ぶ。

一日に二万歩くらい歩いているらしい。かなり足腰が鍛えられそうで、お金も貰えるから一石二鳥くらいに考えている。


京大の病院だから、近くにIPS細胞の研究所もあって、清掃員になった当初、兄と電話で


「IPS細胞を間違って除菌してしまったらどうしよー」


なんて冗談を言っていたが、つい先日、仕事を終えエレベーターに乗ろうとすると、前に二人男性と女性がいた。

その後ろに立ってエレベーターの到着を待つ。到着したエレベーターから下りようとした女性が、目を見開いて、


「お会いできて光栄です!!」


と叫んだ。


なんだ?と思ってスマホから顔をあげると、私の前にいた人物は山中伸弥さんだった。

おおーと思いつつ、そのまま一緒にエレベーターに乗り込んだ。

隣の女性と話す声が谷に立ちこめる霧のように落ち着いていた。象のような陰と陽の力を感じた。

声が、後頭部より10cmくらい後ろから響いているみたいで、どういうこと?と思った。


たぶん、エレベーター内の空間による反響の仕方とか、そういうのではない不思議な声質の方だった。


一階に着くと、扉には私の方が近かったので、先に下りた。


「失礼します」


と声を掛けてみると、


「どうぞ」


と例の声で返事があった。

声を掛けてみてよかったと思った。


夏がすっかり終わって、街を自転車で走ると、色んなところから金木犀の香りが届いてくる。夏が終わったことにも、秋が深まっていくことにも、淋しさを募らせるような感傷が今年はあんまり湧かなくて、すこしそのことを心配してしまう。

大切な感情がひとつ死んでしまったんじゃないかと思いがちだけど、いままでよりもずっと自由で、楽しい生活が今はある。

きっと、独りよがりの感傷のサイクルが終わりかけていて、また次の創造のサイクルへと入っていっているのかもしれない。


最近は公募に絵を出品したくて、気になるものにいくつか応募している。画材代、出品料、運送料と今の私には結構きつくて目が回りそうになるけど、お金のことは考えないで進めていったら、全くクレジットが払えなくなってしまった。

しかも、あと10日を7000円で過ごさなきゃいけない。

新婚のために包むお金が全く準備できていなかった。

式場に向かうだけで精一杯である。

そうだ、パーティ会場の食事を詰めれるだけジップロックに入れて持って帰ろう。


兄ちゃんごめんなさい。今まで借りたお金、一円も返せてないな。

アート音痴な君も、あっと驚くような絵を描いてみせるか。。


とりあえず、おめでとうだ。


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